近視とは、遠くのものを見るときに焦点を網膜上に合わせることができず、網膜の手前で焦点が結ばれることにより、物がぼやけ、明瞭に見えない眼の状態を示します。

近視が進んでしまう原因は眼の長さ(眼軸長)が関係しており、眼軸長が長くなると近視が強くなっていきます。

文部科学省学校保健統計調査で近視(近視性乱視を含む)と考えられる裸眼視力0.3未満の割合が調べられており、それによると1979年には小学生の2.7%、中学生の13.1%、高校生の26.3%でしたが、2010年には小学生の7.6%、中学生の22.3%、高校生の25.9%と、小学生では3倍に、中学生では1.7倍に増えています。
また、2019年東京都内の小学生と中学生における近視の有病率を調べたところ、小学生の約80%、中学生の約95%が近視という報告がされています。

 

近視の原因

遺伝的要因と環境要因の両方が関与しており、環境要因として、近いところを見る作業が長いことや、外の光を浴びる時間が短いことが近視進行に関与すると考えられています。

近視の治療

現在児童期の近視進行抑制について主に行われている方法として
・低濃度アトロピン点眼
・オルソケラトロジー
・多焦点コンタクトレンズ
・特殊眼鏡(Myokids Lensesなど)
が挙げられます。

当院では主に低濃度アトロピンによる点眼で治療を行ってまいりましたが、このたび新たにコンタクトレンズによる近視矯正方法であるオルソケラトロジーでの治療を開始しました。
オルソケラトロジーについて簡単に説明しますと、特殊な形状を有するハードコンタクトレンズによって角膜の形状を意図的に変化させ、近視や乱視の矯正を図るものです。高い酸素透過性を持つレンズを寝ている時に装着することで、起床時にレンズを外して昼間は裸眼で生活するという治療方法です。
メリットは、レーシックのような外科的手術は不要で、日中はメガネやコンタクトレンズといった矯正用具の装用から解放されます。デメリットは、矯正可能な近視度数の範囲が狭いこと、永続的な効果は得られないということなどが挙げられます。

ではなぜオルソケラトロジーに近視抑制効果があるかというと、特殊なコンタクトレンズを装着することで網膜周辺部における遠視性デフォーカス(網膜周辺部における網膜後方に焦点を結ぶことによるぼやけ)を改善することにより、眼軸が長くなってしまうのを抑制できると考えられています。

処方は予約制で行っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

近視の眼

眼は入ってきた光を角膜と水晶体で屈折させて、網膜上で焦点を合わせることにより像として捉えますが、近視の場合は、この焦点が網膜より手前で結ばれるために像がぼやけて見えます。

 

オルソケラトロジーレンズ装用中

レンズを就寝時に装用することで、角膜前面の形状が平たん化し、焦点が網膜上で結ばれて近視が矯正されます。

 

オルソケラトロジーレンズ装用後(裸眼時)

レンズによって平坦化された角膜前面は、レンズをはずしても一定時間形状を保つため、日中は十分な裸眼視力が維持されます。

 

参考引用文献
近視とは.日本近視学会
小中学生の近視増加への警告.慶應義塾大学医学部
日本医師会雑誌.第150巻.第12号P2175-2178.平岡孝浩.眼鏡以外の近視矯正法
文部科学省.2019.令和元年度学校保健統計調査
メニコン.https://www.menicon.co.jp/
メニコンオルソケラトロジー.https://www.menicon.co.jp/ortho