新年のご挨拶を申し上げます。
日本で新型コロナの感染者が見つかってから3年になります。昨年末から中国でも患者数の急拡大が起こるなど感染はなかなか収まりそうにありませんが、引き続き院内における感染対策に努めていこうと思っております。

本年も例年どおり干支である卯(ウサギ)の目についてのお話をしたいと思います。

草食動物のウサギの目はヒトと違った点がいくつかあります。ヒトは肉食動物と同様、目が正面にあるため両眼での水平視野は180゜ほどですが、両目で同時に見える範囲が広く自分からの距離を測るための立体視能力に優れています。
一方、ウサギの眼は顔の真横に付いており、立体視のできる範囲は極めて狭いのですが周囲のほぼ360゜を見ることができます。これは、肉食動物から身を守るために、どの方向から敵が来てもすぐ発見して逃げるためです。
また、ヒトは1分間に20回ほど瞬きをしますが、ウサギは5分に1回ほどしか瞬目しません。ウサギが瞬きをしない理由としては、物が見えなくなる目を閉じた状態を少なくして、肉食動物に襲われたときに咄嵯に反応するためです。
ドライアイの患者さんは瞬きが減ると角膜表面からの水分の蒸発量が増えて症状が増悪しますが、瞬きの少ないウサギの目が乾燥しないのは以下の理由からのようです。
ヒトの涙は眼瞼のマイボーム腺から分泌された油脂が涙の表面を覆っていて水分の蒸発を防いでいますが、ウサギはマイボーム腺以外にハーダー腺という分泌腺が眼窩内にあり、涙液の油層成分を多量に分泌するために瞬きが少なくても平気なのです。また、瞬膜(第三眼瞼)というもう1つの瞼が通常の眼瞼の内側にあり、瞬きをした時に目の表面を覆い乾燥を防ぐ役割を担っています。更に、ウサギは寝る時も目を開けて眠りますが、睡眠時には眼瞼の代わりに瞬膜が目を覆い眼球を乾燥から守っているとされています。
動物実験では、繁殖力が強く飼育が容易なマウスが最もよく用いられますが、眼科の実験では眼が大きく観察しやすいウサギが一般的に使用されます。実験に使われるウサギにはメラニン色素に富んだ黒ウサギと、色素のないアルビノの白ウサギがあります。黒ウサギは虹彩や眼底のメラニンの色を反映して黒い眼の色をしていますが、虹彩や眼底にメラニン色素がない白ウサギは網脈絡膜の血管が透けて見えるため、眼が赤く見えます。角膜の実験では背景が暗いと角膜病変の観察が困難なため、虹彩や瞳孔が明るい色をした白ウサギを用います。一方、網膜実験では黒ウサギを用いますが、白ウサギは感覚網膜の後ろにある網膜色素上皮にメラニン色素がないため、脈絡膜の血管が透けて見え網膜の観察が困難なためです。これは、眼底検査で白人の網膜が有色人種と比べて観察しにくいのと同じといえます。

近年、世界中で近視人口の急激な増加が進んでいることが危惧されています。当院では今年も、低濃度アトロピン療法、オルソケラトロジーなどを中心に児童の近視進行抑制に向けて取り組んでいこうと思っております。

中村眼科  院長 中村公俊