昨年は新型コロナウイルスの蔓延により、今までに経験したことのないような制約された生活を強いられることになり、医療の分野でも大きな影響を受けました。新年に入っても更に感染が拡大し、再度の緊急事態宣言が大都市圈を中心に発出されるようになりました。
とても新年を祝う状況ではありませんが、例年新年のご挨拶として干支の動物と眼の関連について説明していますので、今年も干支である牛にまつわる眼のお話をしたいと思います。
牛の字が病名に入った眼科疾患でよく知られているのは牛眼です。胎生期の隅角の発達異常により、房水が眼外に流出する経路である線維柱帯の機能が低下し眼圧が高くなる緑内障を、先天緑内障または早発型発達緑内障といいます。3歳までの子どもは眼球壁が軟らかいため、眼圧が高いと眼球が膨らんできます。先天緑内障では、特に角膜が大きくなり牛の眼のような外観になるので牛眼と呼ばれています。
また、牛と関連する病気で、かつて私たちの生活に大きな影響を与えたのが狂牛病です。狂牛病は牛海綿状脳症とも呼ばれ、1986年に英国で発見されました。狂牛病にかかった牛は脳が侵されて海綿状となり、歩くことも出来なくなって死亡します。狂牛病はプリオンと呼ばれる特殊なたんぱく質が原因といわれています。牛を食べるとプリオンが人へうつるため、プリオンの蓄積部位である、脳、脊髄、小腸(回腸遠位部)、網膜、硬膜、視神経などが特に危険部位であるとされていました。また、網膜や硬膜を扱う網膜硝子体手術や眼窩手術は、脳神経外科手術と同様、プリオン病のハイリスク手技とされ、特別な滅菌が必要とされました。
ところで、コロナ医療の中心を担っている国立国際医療研究センターは、昨年9月30日に記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症の重症化を予測する血液中の5つの因子を発表しました。その中で、他の因子(IL-6、IP-10、CXCL9、INF-γ3)は血中濃度が高いと重症化しやすいのですが、興味深いことに胸腺や樹状細胞が産生するCCL17というケモカインは、健常人や軽症で済んだ人に比べ、重症化した人では値が低かったことが報告されました。CCL17は、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患で高値となりますが、喘息やアトピーの患者はコロナウイルスに感染するリスクが少ないことが報告されています(Zhang JJ et a1.: Clinical characteristics of 140 patients infected with SARS-CoV-2 in Wuhan China. Allergy;75(7)1730-41;2020)。
花粉症の時期もアレルギーのある人は血中のCCL17が増加しますので、欧米人と比べて花粉症の多い日本人でコロナの重症化が起きにくい原因になっているのかもしれません。
今年の都心は、昨年に比べて1.8倍ものスギ花粉が飛散するそうです。気温や湿度が高まるとコロナウイルスの生存率が低下しますが、コロナの活動性が下がる暖かい春を迎えると共に花粉症の季節となり、血中のCCL17値が高い人の数が増え、コロナ感染の蔓延が収束に向かうことを願ってやみません。

 中村眼科院長 中村公俊